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2017.04.14(Fri) COLUMN

セメント男vol.2:恋心が人のセンスを突き動かす。ダサメンが学んだシンプルな爽やかコーデ。

ファッションに関わる仕事を始めてすでに10年以上になる美奈子は、ここ最近度肝を抜かれる体験をさせてもらった。

同僚のマミが誘ってくれた合コンで自分好みのイケメン青年がいたのだが、そのイケメンは全身を陰湿なグレーでまとめて彼女の目の前に現れたのだ。

「男のルックスは雰囲気で成り立っている」という持論をかざす美奈子にとって、ボリューミーなグレーはあまりに拒否反応を起こすコーディネート。

それゆえ合コンから2ヶ月たった今でも凄惨な事件に遭遇したかのごとく、マミに「セメント男」の愚痴をぶちまけているのだ。

センスと野暮が表裏一体「グレー」の着こなし


灰色は本来他の色との協調性が高く、比較的ミスの少ないカラーとして重宝されている。

しかし、サイズ感を間違えると重量感のある野暮ったい雰囲気を出してしまうので、一定の注意は必要。

正直、グレーを取り入れたファッションで失敗をする方が難しいのだが、「セメント男」はするりとネガティブなセオリーを突っ走って行った。

彼が当日着用していたのは、グレーデニムにグレーセーターの灰色で固めたセット。

ここまでグレーのみで攻めてくるとなると、もはや所持しているアイテムが全てグレーであってほしいという願望も生まれてきそうだ。。。

オシャレ初心者にオススメなのがタイトなテーラードジャケットもしくはコート。

落ち着いた印象を持たせてくれるグレーでコーディネートを締めくくれば、上品かつ深みのあるイメージを持たせてくれる。

せっかく目鼻筋くっきりした端正な顔立ちをしているのに、グレー信者という取り返しのつかないオプションが美奈子の価値観を180度ひっくり返した。

「イケメンなのにぃ・・・!」

ドトールのホットココアをすすりながら美奈子は今にも泣き出しそうな面持ちでマミに向けて悲痛を叫んだ。

爽やかなリフレッシュスタイルはブルーで決まり


コーディネートがオールグレーというこの上なく偏りのあるファッションを目の当たりにした日から3ヶ月ほど経ったある日。

いつも通り来客にオススメのアイテムを提供していた美奈子は、例の「セメント男」と出くわしてしまった。

もちろんショッピングで来店していた彼だが、この日は仕事帰りのスーツで登場。

私服に関してはアレな彼だが、髪型も短髪で爽やかな印象なので、ファッションさえ問題なければ申し分のない男前で通る。

それだけにあの日見た光景は美奈子にぐうの音も言わせない衝撃を食らわせたのだ。

しかし、今日は願ってもいないチャンスが到来した。

ここで彼にピッタリのアイテムをピックアップしてあげることで、練り固められたダサい価値観を変えてあげることができる。

美奈子は普段よりもひときわ高いトーンで彼に近づいて行った。

「いらっしゃいませ。何か気になるものはありますか?」

声がした後ろを振り返ると、そこには見覚えのある女性が立っていた。

「ああ、このあいだの・・・」

人の顔は比較的覚える方のタカトシ。

声をかけてきた彼女が瞬時に合コンの時に目の前に座っていた相手だとわかった。

「そういえばアパレル関係だって言ってましたね。」

「まさかタカトシくんがお店に来るなんて思わなかったけどね!」

日頃から明るさがウリの美奈子の接客に少し意外と感じたタカトシだが、知った顔が接客をしてくれるのは別に気分が悪いものじゃない。

「なんかさ、俺に似合う服探してくれないですかね?」

どこか鼻につく話し方と態度は合コンで出会った時のままで、「そういえば嫌な話し方をする子だったな」と思い返す美奈子。

しかし、憤りを感じる相手でも接客は接客。いつも通り心地よく感じてもらえるサービスをしなければ。

そうしてタカトシに提供したのは水色の無地シャツと細めのホワイトパンツ。

素材だけ見ればこの上なく爽やかなタカトシ。

なので、その魅力を際立たせるためにブルー系統の色をチョイス。

子供っぽさが出すぎないように品のあるタイトなホワイトパンツで大人のマリンスタイルをイメージした。

5分で作れるモテの雰囲気


「うん!すごく爽やか!」

接客の一連ではなく、自然と溢れ出た美菜子の感想だった。

同様にタカトシもまんざらではないといった表情。

「いいね!これもらいます!!」

本当にオシャレに無頓着だったのだろう。これまで見たことのない自分に驚きを微塵も隠さず喜びの笑みをこぼしている。

自分が提供したセットに満足してもらい、美菜子も喜悦の情で胸がいっぱいになった。

そうして土管のような全身グレーのコーデをしていた「セメント男」を清涼感あふれる爽やかイケメンに仕立て上げたところで、美菜子はタカトシに此度洋服を買いに来た理由を尋ねて見た。

すでに20代半ばになって今まで洋服に関心がなかった成人男性が急におめかししようと思ったのだ。きっと女絡みに違いない。

「ちょっと言いづらいんだけどさ、好きな子ができたんだよね。。。」

「それ見たことか!」

美菜子とはすでに一回り近く年の差があるタカトシ。

はなから恋仲として意識するような相手ではなかったが、どことなく腹立たしさと悔しさが溢れ出る。

まあ、一人の青年をダサメンの道から救出しただけでも良しとしよう。

タカトシが想いを寄せている彼女は現在彼と同じ職場にいる同僚のユカ。

職場ではスーツor私服のどちらも可、スーツもしくはビジネスカジュアルで出勤するのが通例だが、ユカはとにかく「オシャレな女性」らしい。

地球の真裏に位置するかのごとく正反対のセンスをのタカトシとユカだが、とにかく気は合う様子だった。

高慢な一面があるタカトシに奥ゆかしくて控えめな性格のユカは他の同僚からもお似合いだと噂されるほど。

しかし、まだ交際しているわけでもなく、社外で会ったことすらない。

かつタカトシの今ままでの恋愛は全て受動的で、自分から女をオトしたことがない。

そんな洋服のセンスと一緒にこじれた恋愛観が、ユカをデートに誘うことに攻めあぐねていたのだ。

あれだけ野暮ったい格好をしていたタカトシだが、自分がオシャレではないという認識はあるし、オシャレな雰囲気はわかるくらいの嗅覚はあった。

もちろん社外で出会うならスーツではなく私服で会うことになる。

それにはあの「セメント男」のセンスで固めたコーディネートをひっさげることになり、大きな懸念があった。

日頃の彼女の態度を見ていれば見てくれだけで判断するわけではないが、戦地に赴くとなるとできるだけ万全を期したい。

一着でもいいので、「勝負服」が欲しかったのだ。

そうしてたまたま訪れたのが美菜子の務めるセレクトショップだった。

姉が好きな子にアプローチを仕掛ける弟のためにオシャレな洋服を選んであげる。

タカトシが試着室から出てきた瞬間に美菜子はそんな世話焼きの気持ちで満たされた。

「5分もあればモテる男は作れる」

自分の持論が改めて間違っていないことに気づいた彼女は勝負服を携えたタカトシを入り口まで見送った。

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